秘書問題

僕は大学生のとき数理工学というやつを専攻していた。 工学としての数学、つまりは実際に役に立つ数学を学問するところだ。

ある日の講義で、「秘書問題」を扱った。 秘書問題と言っても、政治家の秘書が贈収賄を、ってなやつではない *1。 どういう問題かというと、

という条件のもとで、最も良い人を選ぼうという問題だ。 もう少し厳密に言うと、「最も良い人を選ぶ確率を最大にする戦略」は何かという問題。

過程は省いて *2 結果はどうなるかというと、

というのがこの問題の解答だ。 導出はそれなりに手間がかかるが、答えはいたってシンプル。 ちょっと面白いでしょ。


この問題の応用例を紹介しよう。

最近のことだが、僕は友人と上野で待ち合わせをしていた。 そこに向かう電車の中でふと、上野が秋葉原のそばであることを思い出した。 最近メモリの不足を感じており、増設を考えていたのだ。

そこで寄り道して買い物をすることにした。 しかし友人との約束があるので30分くらいしか秋葉原にはいられない。 一軒見るのに5分としても、6店くらいしかまわることはできない。 末広町駅で電車を降りて秋葉原駅から乗る。引き返すことはできない。

ここで秘書問題の出番である。 6店舗のうち1/e、つまり約2軒を見送って、 その後一番安い店が現れたところで買えばいいのだ。 実際に一軒目は¥4,970、二軒目は¥4,980で、 三軒目で¥3,980だったのでそこで購入した。

というわけで数学は役にたつのだ。 「積分なんて実際なんの役に立つんだよ」とかいう高校生に教えてあげよう。


もう一つ適用例を紹介しよう。

お年頃になった貴方がそろそろ結婚したいなあと考えていたとする。 今後一年間で12人くらいの人とお見合いをして、最良の人を見つけたいと思っている。

しかし、前の人をキープしたまま次のお見合いをするというわけにはいかない。 次に移る前に決断をしなくてはならない。 もう説明は不要と思うが、ここで前述の戦略を適用する。 これでめでたく、最良の人を選ぶ確率を最大にすることができる。

もちろんこれは確率を最大にする戦略であって、必ず成功するわけではない。 たとえば見送った1/e グループの中に最良の人がいた場合は、 それを超える人は現れず、最後の見合い相手を選ぶしかない。どんな人でも。

ましてや見合いである。自分が選んでも相手には選ばれないかもしれない。 ご利用は自己責任でお願いする。


*1: 「秘書問題」でググるとそういうのばかりがヒットして、今回の話題には行き着けない。 ググる時は "Secretary Problem" をどうぞ。
*2: つか、忘れた。